報告書・議事録

佐藤会長他当会会員が坂口大臣と面談の内容(2004/01/27)

(坂口:坂口力・厚生労働大臣
佐々木:佐々木雄三・島根県議会議員
佐藤:佐藤均・「癌と共に生きる会」会長
笠松:笠松久美子・「癌と共に生きる会」事務局長
武重:武重晶子・「癌と共に生きる会」監査役
橘 :橘純一・「癌と共に生きる会」会員)

佐藤:今日、私は全国のがん患者、そして家族の代表として参っております。お願いしたのは、二つございます。
まず、抗がん剤の早期承認でございます。
日本はご承知のように、諸外国と比べまして、承認のスピードが大変遅れております。そういう意味で、がん患者は大変困っております。抗がん剤の早期承認のためのスピードアップをさらに急いでいただきまして、世界レベルの域まで、日本の薬を承認していただきたいということが、まず第一のお願いでございます。
二つ目は、地域の医療格差でございます。
島根には抗がん剤の専門医というのが一人もおりません。がんに罹っても地方でも安心して暮せるようながん医療体制を望みます。
併せて具体例を申し述べさせて頂きますと、私は大腸がんの患者ですけど、薬の承認がわずか三つでございまして、こうしてことが大腸がん患者の寿命にもつながっております。
オキサリプラチンという薬の情報を得ました所、まもなく厚労省の方に申請を出すということでございますので、これを優先審査として頂きまして、一日も早く我々大腸がん患者の元に届けて頂きたいというこの三つのお願いでございます。
よろしくお願い申し上げます。

坂口:ありがとうございました。
初めてお目にかかる方もおると思います。坂口でございます。今日はわざわざお越し頂きまして、ありがとうございます。
今、会長さんからお話がございました二点のことについて、私も大変重要なことだと思っております。
最初の方の第一点目でございますが、日本の中でできましたお薬をどう早く製品化し、そして皆さんにお届できるような状態にするかという問題と、外国で既に使わておりますお薬を、それは外国ではもう既に使われているんだから、早く日本に入れてほしいと、二つあると私は思っております。
特に外国で使われております物等につきましては、今まで厚生労働省の中の医薬食品局の中で選んでやってたんですが、今度方法をちょっと変えさせて頂いて、いわゆる現場でこれを使っておみえになる病院の先生方のご意見を聞いて、どの薬を優先するか、今年はこれとこれを優先項目に入れ様ということを決めて頂く様に決め方を変えました。今年からそれで回りますから、で先生方にひとつそれでご議論頂いて、優先をすべきがんならがんの薬剤、まあがんだけではございませんけども、がんならがんの薬剤は今年はこれとこれとこれにしようという様なことを決めていただく。そしてそれにつきましては、早ければ半年、少なくとも1年以内、という期限の中で、皆様方のお手元に届けられる様に承認をするという体制を整えましたので、これからそういう計画の元にいきたいという風に思っております。
それに対しましても、やっぱり外国で良いから日本で全部それ使えるかという風に言いますと、やはり人種と言いますか、やっぱり若干違う所がございまして、そこはやはり日本は日本の中でもう一度何人かは大丈夫かどうかという治験をやはりやらなきゃならないという問題がございまして、それはやらせていただきたいという風に思っております。
それをやるということと、それから今までは外国の承認されていない医薬品を使われますと、その薬代について全額負担をして頂くでけではなくて、それを含む医療行為全体を負担して頂くということになっていたわけです。それはもうあまりにもあれで、それまでの間、とにかくその薬代については、承認されていないもの、その薬については、自己負担をして頂かなければならない。他のことは保険適応ということでいける道を作った。こういうことでございます。

佐々木:私たちが悩んでいることの中で、やはり地域格差というんでしょうか、先端医療というとどうしても都会の大病院に、先端になればなるほど、地域格差というものがでてくるという悩みを持っておりまして。なかなか良い解決方法がないものですから、またお力添えをと思いまして・・・

坂口:そうですね、先ほどの話をもうちょっと続けますと、今一番問題になってますのは日本の国の中で、その薬が良いかどうか、いわゆる治験がなかなか進みにくい。外国はここが非常にスムーズにいくわけです。ここは皆さん方にもご協力いただきたいんですが、諸外国におきましては、いわゆるそれぞれのがんの患者さんのグループが強力に協力して頂いているようなことで。日本はそういう形になってないものですから、大学病院を初め、大きい病院等でですね、お一人お一人にですね、なって頂けますかと、それでいくという感じなんですが、アメリカと日本と一桁違う。日本が100例やるのが本当に苦労する。向こうはもう1,000例からやるというようなことに・・・その辺も遅れてくることの一つなものですから、そこをどうするかということも、これ考えていかなければ・・・皆さんにもご協力いただいて、これは本当に考えていかなければいけないことだと思っております。
それから地方の問題でございますが、これはどこまでを専門医というかということにもよります。まあしかし、このがんの薬なんというのは、非常に先端的な医療と申しますかね、次々と新しくなっていく話しなものですから、先端医療のことを十分に勉強しておる人でないと、十分に使いこなせないということがあるわけですね。薬だから誰が飲ましても、誰が注射しても同じじゃないのと、こう言いますけどもなかなかそうはいかない。
私も地方、私三重県でございます。私の方がもっと遅れておると思いますが。常に私もそう思うんですね。地元のどっかに良い先生ありませんかとこう言われるわけですが、はたと困るわけです。それでがんセンターなんかに行きますと、もう一年先まで詰まってますと言われてですね、がんの患者さん、一年待ってくれって言ったって無理な話でありまして、外来で行って診てもらうのだけ診てもらって、まあこういう風に地元でやってもらってほしいとかいうことでやってもらうとかいうことを続けているわけです。それにいたしましても、ここの所のレベル(格差)を何とか縮小していくことを考えないといけないんだと思いますね。がんセンターでも、地方のがんセンターと、東京のがんセンターとでは格差があるとこう言われるわけであります。その辺の所をどう埋めていくか、これはそれぞれの地域におみえになるがんを担当している先生方に研修して頂く以外に方法はないんだと。私は研修して頂けば、能力は十分にお持ちの先生方が地方にもおみえになっていると思いますが・・・最新の所を常に研究して頂くということをですね、もう少し制度的にやっていかないといけないのかなという風に率直にそう思っております。
従いまして、日本だけではなくて、外国からの先生にも来てもらい、最先端で取り組んでいる人たちがどういう風に今やっているかということの勉強をやってもらうということをですね、ぜひそういう会を毎年できる様にやらないといけないと思っている最中でございます。
今日皆様方がおみえ頂きまして、そのことをぜひ実現して頂きたいという風に思いました。そうすればかなり地方のレベルが・・・そんな特別な医療機器が必要なものばかりではないと思うんですね。必要なものは例えば、レントゲンの関係でありますと、新しい中性子使うとか何使うかとなって参りますと、これはどこでもできるというわけにはちょっと参りませんけども、そうではなくてもかなり僕は進むんじゃないかと思っていますので、そこはそういう風なことで、絶えず研修を続けて頂けるような制度を作って、そしてそれぞれの地域でやって頂くという風にぜひしたいと思っております。

佐藤:笠松さんは、私と同じ大腸がんのお母さんをお持ちですが、先ほど言いましたオキサリプラチンがですね、未承認のために月々百数十万の治療費を支払っているんですね。

坂口:何ですって?

佐藤:オキサリプラチンですね。これはヤクルトがまもなく申請を出すことになっております。で、大腸がんは、わずか承認されているのが3種類しかございませんで、要するに3種類分の生命しかございません。この3種類というのは、人間は耐性というものがございまして、すぐ使い切ってしまうんですね。そうしますと未承認薬を使わざるをえない。ぜひともこの先ほど申しました様に、優先審査をしていただきまして、一刻も早くこのオキサリプラチンを認めていただきたい。

坂口:これとよく似た薬というのは、外国にあるんですか?

佐藤:これは諸外国で全部使っておりまして、アジアで認められていないのは、日本、北朝鮮、モンゴル、この3国でございます。これほど大腸がんの承認薬は遅れていると、北朝鮮並みであるということでございます。

坂口:製薬会社はどっかにあって、それをヤクルトから販売すると?

佐藤:そうですね、だけど実はもともとオキサリプラチンというのは、日本で作られたものでございまして、大臣が仰ったように、治験の問題がございまして、日本で開発されながら、日本で使えないというような状況にあるんですね。
笠松さん、あなた経済的問題、大変でしょうが?

坂口:高いんでしょうね、これは?

笠松:高いです。薬自体が高いというよりも、それに付随する医療全てが嵩んでくるという問題が一番です。あと実際に使ってみて思いましたのは、「心」です。と言いますのは、経済的も非常に大変です、でもそれを使うことによって、家族に負担をかけていると患者が思ってしまう、それが今非常に大きな問題として、家庭の中で話しをしています。そうでなくても、患者自体毎日、10分ごと、もっとと言っていいくらい波が、体調の変化と心の変化というのは、分刻みで変わっていくものでして、その落ち込んだ時の心の負担と言うのは、もう計り知れないんです。それというのは、経済的な問題であり、自分が何もできないと思ってしまう心の問題であり、というのが非常に家族の中で問題です。なので承認していただければ、その心の問題も、経済的な大きい負担という所が抜けていきますので、患者自身も波というのが少なくなってくるのではないかなと思います。それが本当に切ない・・・

坂口:今までどの製薬会社からも、日本で販売の・・・承認の内通は出てなかった?

佐藤:出てなかったんですね。3月末に・・・これはもう第Ⅱ相まで終わりまして、申請の段階に入ったということでございまして、先ほどもいいましたように、大腸がんは本当に薬が少ないんですね。もう3種類分の命しかないということでございまして、全国で毎年3万7,000人ぐらいが亡くなっておるというのも、やはりそう言った薬がないということの原因のひとつであろうと思いますね。
武重さん、あなたはいつもご主人をサポートしていらっしゃるご苦労があると思うんですが、いかがですか?

武重:そうですね、今もう笠松さんが仰ったように、一つ承認されてないというか、一つこの臓器では使えないと、全部自由診療の値段になって、途端に負担が倍増するということは、やはり患者本人も家族も、病と闘うということだけでも大変なんですけど、それに加えて倍増する精神的な、経済的な負担というのを抱えないといけないと思うんですね。
先ほど大臣が仰ったように、その薬の薬価だけは全額患者が負担するけれど、他のはもう保険で手当できるという風なことになったら、もうどれだけありがたいかなというのは、いつも感じております。

坂口:外国で使われている薬、それを日本の先生方が輸入してそれを使う。その時にその薬代は負担をしてもらわなければいけないけども、今まではその薬を使う診療全体が自由診療みたになって、全額自己負担しなければならなかった。で、その薬の所はやむをえないけれども、他の所は保険で適用するということにしたんで、それが全部で行われているのか、いつからもう既に始まっているのか、それをちょっと聞いて。

秘書:わかりました。

武重:私の主人は膵臓がんなんですけども、ジェムザールというのとTS-1で、二つで治療して頂いて、大変良い結果を出して頂いているんですけども、実はTS-1というのは、膵臓がんでは使えない、保険は適応されてないということになっておりまして、もう明らかに、がんセンターなんかでも良い結果を出しているというお話も聞いたりしますし、がんというのは使える薬が多ければ多いほど、色々手があって、耐性ができてくると、ひとつの薬、これが良いからといってずっとそれでいくわけにはいかないものでして、先生方に、色々なものに使えるように、ひとつの臓器、これはいいけれど、こっちの臓器ではダメというようなことも、もっと色々な臓器に適応できるようにして頂けたら、どれだけ先生たちも自分の才能というのを発揮しやすくなって、患者も色々治療の手立てがあるということで、安心感を持てると思いますので、その辺のこともどうぞよろしくお願い致します。

坂口:分かります、分かります。どういうがんに対して使えるかということも、少し幅広げて頂いて、それも同じだと思ってますので。ただしこれもね、物によっては、イレッサみたいに使い方が難しいのもあってですね、許可したのはいいんだけれども次々に亡くなるということになってですね、あわてふためいたりという経緯もありますので、ちゃんと使う能力のある人が使ってくれると、そこはちゃんといくんですけども、その時にどういう副作用が起こるかということをですね、よく理解した人かどうかという所も考えていかなければいけない。だからさっき仰った二つのことは、車の両輪だと思うんですね。

佐藤:そうですね。
大臣、それとですね、大臣のご尽力で、今年の1月の6日に、抗がん剤併用療法に関する検討委員会というのを開いて頂きまして、誠に本当にありがとうございました。そこで厚生労働省側と専門家の先生、両者が我々のために色々ご尽力下さっているんですが、我々の願いとしては、そこに患者側もですね、ぜひとも参加させて頂いて、行政、そして現場のお医者さん、で実際に困っている患者・家族、この3者がですね、検討するとうな方向で、検討して頂けないでしょうかというのが、お願いもう一つでございますね。

坂口:まあできるだけまあ・・・あまり専門的な所に入って頂いても苦痛かもしれませんけど、できるだけ皆さん方のお声を聞くように、一生懸命やっておりますけども。まあ非常に今まで長い間変わってこなかったやつを変えることは、もうねえ、かなりな馬力いるんですけども、変えておりますので。

佐藤:ありがとうございます。
橘さん、ぜひあなたもお一つ。

橘 :母が大腸がんで、先ほどの笠松さん、佐藤さんの話しと重なってしまうんですけども、私の母も日本で認められている薬をもう3つほど試してきまして、ここにきて効果が薄れつつあると、次の薬にいかなければいけないという段階になって、主治医の先生とお話しまして、やはりオキサリプラチンという名前が出てきます。ただ今現在、未承認薬ですので、だいたい月に100万円のお金がかかってしまう。じゃあお金の相談をやはりしなければいけませんので、家族の中で考えた所、10ヶ月はもつかなということなんです。そのことを先生にざっくばらんにお話したら、そうしました所、やはり10ヶ月では効果が出始めた頃、効いているかどうか分かり始めた頃にお金がなくなるんじゃないかということを先生から言われましたもので、これは一刻も早く承認して頂かないと。先ほど大臣の方から早くとも半年、遅くとも1年ということだったんですが、私の母の場合は1年はもうとても待っていられませんので、一刻も早く認めていただきたいなと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

坂口:分かりました。個々の何がどうなっているかまでは、私はちょっと把握しておりませんが、今このオキサリプラチンは、名前を聞きました。

佐藤:お願いします。日本の薬でございます。大腸がんは、ほとんど日本の薬でありながら、承認が遅れてきたんですよね。大臣いかがですか、私たちは今、大臣にお願いするばかりですけども、ぜひ行政側からのですね、こういうことを協力してほしいということありましたら、我々もお願いするだけじゃいけませんので、どんなことでも致しますから、ぜひ言って頂きたいと思います。

坂口:それは先ほど申しました治験が進みやすくなるということ、これが一番。で、今までは製薬会社が、大学病院とか国立病院にたのんでやっていたということですけども、それだけでなくて病院の先生方が自主的に、この薬ならこの薬についての治験をやっていく、主体的にやっていただけるような体制にしたということ。だから、たくさんやっていただけるようになると思うんですけれども、しかし、一つはいわゆる治験の対象になっていただく皆さん方にですね、なかなか、「私をモルモットにするのか」という気持ちが非常に強い。

佐藤:日本はそうですね。

坂口:日本はそれが非常に強いんですね。それでなかなか「うん」と言っていただけないという所が。まあ医者の方は「こういう副作用があるということも覚悟しておいて下さい」と言わなきゃいけない。そういうと、「じゃあ私はやめておきます」ということになってしまうという例があるということがあって、そこは皆さん方の団体でも、これはしかし辛抱しようと、しかしこれは何とも早く認めなければならないということについては、ご協力頂けるようになれば、日本の国ももう少しスムーズにいくんではないかなという気がします。

佐藤:がんばりたいと思います。

坂口:そういうことでまたお願いを・・・

佐藤:よろしく、こちらこそ。

坂口:皆さん方との連携を密にしていくということが非常に大事だと思っておりますので。今日は本当によくおいで頂きました。ありがとうございました。

佐藤:こちらこそ本当に貴重なお時間を・・・

坂口:全力をあげて、改革に取組んで参ろうと思っております。

佐藤:(混合診療の)話しは、今年の1月1日からは、使えるようにしているようでございますので、ただ、それを病院を限定してるかもしれませんので、大きい病院とか、後で、ご報告申し上げる様に致します。

一同:本日はありがとうございました。

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