報告書・議事録

ゲフィニチブ(イレッサ)のISEL試験結果の検討会(05.01.20, 10・05-13:05)について

ゲフィニチブ(イレッサ)のISEL試験結果の検討会(05.01.20, 10・05-13:05)について
(ISEL=IRESSA Survival  Evaluation in  Lung cancer)

(当会から抽選に残った芹澤さんと牛山が傍聴した。)

Ⅰ この検討会の趣旨は「今般、アストラゼネカ社から、日本を除く世界28カ国で実施された、治療抵抗性非小細胞肺がん患者の生存期間をプラセボ(偽薬)と比較検討する ISEL試験の初回解析結果の報告があったことから、本試験結果に関して検討を行うことにある。」

このため、医学薬学等の専門家等からなる「ゲフィニチブ検討会」を開催することとなった。

Ⅱ 委 員

池田康夫 慶応大総合医科学センター長(欠席)、北澤京子 日経BP社医療局編集委員、栗山喬之 千葉大加齢呼吸器病態制御学教授(欠)、下方薫 名古屋大機能調節内科学教授、竹内正弘  北里大院薬学臨床統計部門教授、土屋了介 国立がんセンター中央病院副院長、貫和敏博 東北大呼吸器腫瘍研究分野教授、堀内龍也 群馬大院薬効動態制御学教授兼付属病院薬剤部長、堀江孝至 日本大医学部長、松本和則 国際医療福祉大教授(座長)、吉田茂昭 国立がんセンター東病院長(欠)

他にアストロゼネカ社から数名、厚生労働省浅野医療安全局長以下8名出席

Ⅲ 議事次第

1 現在までの安全対策の概況(厚生労働省報告)

・ゲフィチニブ申請から現在までの経緯

2001.  7.30  米国FDAへ承認申請

2002.  1.25 日本厚生労働省へ承認申請

2002.  7. 5 承認

2002. 10.15  アストロゼネカ社へ緊急安全性情報発出を指示

2002. 12.25  第1回ゲフィニチブ安全性問題検討会

間質性肺炎等358例中死亡例114

2003. 5.  2  同第2回検討会 616例中死亡例246

2004. 3. 23  症例数 1151例中死亡444

2004.12.17  アストロゼネカ 英国本社が延命効果試験結果を公表

2004.12.20  日本アストロゼネカ社が 同結果を公表

2005.1.4   アストロゼネカ社欧州医薬品審査庁に対するイレッサの承認申請を取り        下げ

・厚生労働省 医薬品医療機器総合機構に報告されているゲフィニチブ使用との関連が疑われている急性肺障害・間質性肺炎等の副作用発現状況(報告日による集計、2004年12月28日現在)

報告例数1473例 うち死亡例588例 推定累積患者数86800人

・2002年7月5日の承認の条件として、「非小細胞肺癌(手術不能又は再発)に対する本薬の有効性及び安全性の更なる明確化を目的とした十分なサンプルサイズを持つ無作為化比較試験を国内で実施すること」が義務付けられていたが、2002年10月の緊急安全性情報を受けて審査センターから安全確保が図られるまで新規の患者の登録中止、投与中の患者に対する同意の再取得等が指示され、その多くが中止された。

2  ISEL試験結果について-アストロゼネカ社からの説明-

(英語使用同時通訳つき。但し声が小さく不鮮明)

・委員へ配布された資料は傍聴者には配布されず。

(2005年3月(予定)学会誌に公表以後は公開との説明あり)

・ISEL試験結果の概要

i ISEL試験はイレッサ(250mg/日)+ベストサポーテイブケアー(BSC)vsプラセボ(偽薬)比較第Ⅲ相臨床試験で、海外28カ国(日本をのぞく)において行われた。標準化学療法が効かなくなった非小細胞肺がん患者への第2次または第3次治療として1692例を対象とした。

ii 試験期間:2003.7.15~2004.8.2

iii 対象患者:1692例(1129例:イレッサ、563例プラセボ=偽薬)、210施設、28カ国

iv 主要評価項目:生存

v 副次的評価項目:治療変更までの期間、奏効率、QOL、EGFR発現、EGFR遺伝子の変異とその他バイオマーカー、安全性

・主要内容

i 全患者1692名対象の解析で、イレッサ服用患者はプラセボ服用患者と比較して、腫瘍縮小効果では統計的に有位な改善が見られたが、主要目的である生存期間に関しては統計的に有意な延命効果に至らなかった(5.6ヶ月と5.1ヶ月)。

ii 東洋人(日本人は含まず)患者374名を対象とした解析ではイレッサ服用者9.5カ月に対しプラセボ服用者5.5ヶ月となり、生存期間の改善が示唆された。

iii 非喫煙者と喫煙者との比較では非喫煙者に有意の効果が認められた。

(時間が超過したため、質疑は十分でなく。会社側は委員席から退席)

3 委員からの臨床例の紹介

・土屋了介委員 国立がんセンター中央病院副院長

i腺癌Ⅳ期55歳男性の例

主訴 全身倦怠感・咳  既往歴25歳時肝炎、43歳時胸膜炎、喫煙45本×25年

転移 骨・脳  前治療シスプラチンを含む 肺内転移が増大し、ゲフィニチブ

開始。

肺 レントゲン写真と 胸部 CT写真 投与1ヵ月後に著しい改善。

原発巣は縮小 転移巣はほぼ消失、咳・倦怠感・骨転移部の痛みは消失。

副作用 全身紅斑・口角炎・足のゆび爪周囲炎出現 しかし症状は軽度であり治療は不要であった。

2年4ヶ月後の現在、効果継続し、ゲフィニチブ投与継続中。

ii 国立がんセンター中央病院のゲフィニチブ(イレッサ)投与状況

奏功率87 / 266=33 %  ILD=間質性肺炎発症数16(44%) ILD死亡数8(2.2%)

iii ゲフィニチブvsドセタキセルの比較第Ⅲ相試験(市販後臨床試験)

15例登録(うちゲフィニチブ群7例)、ILD1例、治療関連死亡なし

最近の外科手術は5-7日退院が常識であり、40間入院という条件をうけいれる患者が少ないので登録数が極めて少ない。

4 以上の報告に対する総括討論

i  欠席委員からのコメント

栗山喬之委員 東洋人への有効性があきらかなことは重要。現行方式の継続が望ましい。

吉田茂昭委員 安全性検査結果の数値はがん研センターの2.7%と大差ない。現行方式を縮小しなくても、死亡を防止する手段はある。

ii  以上の報告・コメントを踏まえ、新たな安全措置は必要か

堀内龍也委員 間質性肺炎の発症率が高い。死亡率を下げるため使用法についてコントロールが必要である。そのためには遺伝子変異の有無をチェックして、イレッサ使用は、変異のある患者に限定するのが良い。

北沢京子委員 イレッサが分子標的薬ならば、それにふさわしい使い方に改めよ。

生存期間の延長効果が出てから承認すべきである。

土屋了介委員 北沢委員の意見は次期尚早だ。なお経過を慎重にみるべきだ。

堀江孝至委員 早期発見・早期対応を望む場合に、入院して使用する事が前提された。これを堅持することが重要だ。症例の蓄積と共に死亡率は安定してきている。安全を重視しつつ、結果を見ていくのがいい。

下方薫 委員 薬剤の作用の仕方について十分な知識が必要だ。しかし変異遺伝子のある患者に使用を限定するのはなお問題がある。

土屋了介委員 がんの専門家以外の医者が使うことは問題だ。

(以上で討論を打ち切り、約15分の休憩を取り、松本和則座長と竹内正弘委員と事務局でまとめの草案作りにとりかかった)

5 まとめ

(傍聴者にはプリント草案が配布されなかったので以下の記述は骨子のみ)

① 生存率については全症例検査結果で有意な差はなかった。東洋人・非喫煙経験者についていい効果が認められた。副作用を含めた解析結果はまだ示されていない。

② 現在、早急な結論を出すことが出来ない。東洋人に有効であることが示されているので、現時点ではまだイレッサの使用を制約する必要はない。4週入院の条件は維持する。

③  医療機関における情報提供は重要である。薬の投与に当たっては患者の同意を重視すべきである。

④ 製薬企業の治験の強化を求める。盲研無作為化試験に改める

⑤ 情報提供の強化を呼びかける。

以上に対する委員からの補足見解

堀内孝至委員 安全性問題についてより多くの関心を払うべきである。特に非間質性肺癌についての解析が不可欠である。また分子標的薬への対策を急ぐべきである。

以上、13時05分散会。(文責 牛山)

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