要望書・請願書・質問書

EBMに基づく癌治療を可能にするための要請書(2002/04/24)

平成14年4月24日

厚生労働大臣
坂口 力 殿

日本がん患者団体協議会(JCPC)
明日の医療を考える会      理事長 山崎文昭
癌治療薬早期認可を求める会  会長   三浦捷一
癌と共に生きる会          会長  新山義昭
がんナビゲーション市民ネットワーク   代表   服部順治

EBMに基づく癌治療を可能にするための要請書

貴厚生省(当時)は、抗がん剤の適正使用ガイドライン作成の検討を平成10年度には日本臨床腫瘍研究会に、続いて平成11年度には日本癌治療学会に委託し、ガイドライン作成にあたっては、貴省委託事業組織の各がん領域の化学療法専門医集団によるガイドライン作成委員会を組織して行なわれました。
平成13年11月に開催された第13回日本癌治療学会総会では、このガイドラインの作成を中心になって進めてこられた県立愛知病院院長の有吉寛氏から、その一部が公表されました。

その中で、有吉氏はガイドラインを作成するに当って、「最も困難な問題は、医療保険で適応疾患となっていない薬剤が重要なエビデンスとして採用されていることであったということです」と述べ、その具体的な例として、

Ⅳ期非小細胞肺癌に対するCDDP+VP-16のうちのVP-16=エトポシド
などを上げられました。この抗がん剤は、申し上げるまでもなく、別の適応疾患では認められておりますので、日本には存在し、適応が認められている疾患の患者には使用されている薬剤です。

これ以外にも、各がん領域の化学療法専門医が、科学的根拠があり、使用すべきであると推奨する複数の抗がん剤が、日本では保険適応外であることが明らかにされました。

平成11年2月1日、貴厚生省(当時)が各都道府県衛生主管部(局)長宛てに出した『適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて』によれば、外国において広くその適応症が認められ、内外における評価が確立している場合には、貴省は、新たに臨床試験の全部または一部を求めずに承認審査を行なう仕組みを導入されました。

これに従えば、「抗がん剤適正使用ガイドライン」で、我が国の各がん領域の化学療法専門医が使用すべき薬剤として上げられた抗がん剤の内、日本で保険適応外であるものについては、貴省は、当該薬剤の製造会社と連絡を取り協力して申請を促し、『適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて』の仕組みを使って、早急に保険適応とするよう努力されるべきであると当協議会は考えております。

また、衆議院(新件番号1137)および参議院(第953号)で採択され内閣に送付された「新薬の早期承認に関する請願」の中でも「世界的標準と認められている新薬の早期承認」が求められていることは、貴省も既にご存知のことと存じます。
現在、こうした保険適応外の抗がん剤は、各がん領域の化学療法専門医が病院負担で使用するか、あるいは患者が100%自己負担の自由診療で受けるなど、病院や患者に負担を強いなければ使えないのが現状です。
厚生労働白書平成13年版に書かれている「EBMの推進」(175頁)によれば、「厚生労働省としても積極的にEBMを推進することとしており」「学会が最新の治療法を集積した診療ガイドラインを」「いち早く臨床の現場で利用できるよう」にすべきと貴省はお考えのようですので、EBMに基づく癌治療を可能にするために、当協議会は、以下の要請をさせて頂きます。
要請事項

1. 抗がん剤適正使用のためのガイドラインの早期制定のお願い

貴省の委託事業で進められている「抗がん剤適正使用のためのガイドライン」を早急に制定し、いち早く臨床の現場で利用できるようにして頂きたく存じます。
2. 同ガイドラインに示された保険適応外薬剤の早期承認のお願い

上記「抗がん剤適正使用のためのガイドライン」で示された抗がん剤の内、日本で未承認または保険適応外のものについては、早急に保険適応して頂きたく存じます。
3. 貴省から製薬会社への働きかけのお願い

上記2を早急に進めるため、当協議会は、当該薬剤の製造会社に対して、貴省に申請を行なって頂く様要請を行ないますが、貴省からも申請を促す働きかけをして頂きたく存じます。

4. ガイドライン検討委員会設立のお願い

申し上げるまでもなく、ガイドラインは作成後、常に内容を吟味更新していく必要があります。今後は貴省内にガイドライン検討委員会を設立するか、もしくは学会などに同委員会の設立を委託するなどして、毎年、内容についての見直し・更新を行ない、その中で新たに出てきた薬剤については、早急に承認し、患者に提供できるシステムを構築して頂きたく存じます。

以上、ご検討下さる様よろしくお願い申し上げます。

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